ずっと覚えてる景色とかない。ずっと覚えてる景色というのは、目に焼きついて脳裏から離れないみたいなやつのこと。写真とか見返さなくても自分の脳内シアターで上映できるようなやつのこと。
私は記憶の呼び起こし方法がわからないので、定期的に写真を見返して当時好きだったことや言われて嬉しかったことを思い出すようにしている。
(忘れたくはないけど)思い出したくないこともあるので、薄目でフォルダをスクロールしながら2018年からの写真を振り返った。はてなブログを記憶媒体の一つにしようとしている。
◾️奈良のため池
奈良はため池が多い。海がないからかな?
1枚目は2020年1月3日 バイトの仕事始めだった帰り。通勤路の古墳を抜けた先にある。ぼろぼろの桟橋や底の抜けたボートが沈んでいて鴨の遊び場になっているため池。昔はボートとか乗れたのかな。
2枚目はいつ撮ったのか覚えていない。平城宮跡とならファミリーの間にあるため池。亀がたくさん泳いでいた。
ため池の水面に反射しているものを見るのが好きだった。西陽とか、空とか。
◾️奈良の田んぼ
大学時代は各駅停車しか停まらないところから徒歩18分、1LDK5.2万円のマンションにハムスターと暮らした。
駅前にコンビニはなく、田んぼと自動販売機と古墳しかなかった。
梅雨前後、水が張られて湖のようになっている田んぼを横目にチャリをぶっ飛ばすのが好きだった。バイト帰りには反射する西陽がきれいでよく立ち止まって眺めていた。写真をたくさん撮っていたと思うけどフォルダから見つけられなかった。
◾️奈良の霧
奈良の冬は霧の季節だと思っていた。特に朝と夜。
伸ばした腕の先がギリギリ見えるかどうか、くらい濃い時もあった。
どのくらい歩いたのか、まっすぐ歩けているのか、前後感覚の認識が難しく、時間が止まっているように感じられて好きだった。
大阪からたまに来る姉は、セットした前髪がびちゃびちゃになってしまう と文句を言っていた。
◾️奈良のバイト先
10種類くらいバイトをしたけど、カフェでのバイトが一番長かった。
いわゆる「丁寧な暮らし」(嫌いな言葉トップ10に入る)代表みたいなお店なのに、1分前に滑り込みで出勤をしていた。走り回ってオーダーを取ったり、味噌汁で火傷したり、作家物の皿を割りまくっていた。私の淹れた紅茶は渋くなかっただろうか。
併設しているショップで配送品の梱包をしたり、アパレル商品のモデルもしていた。
モデルをする日を「撮影の日」と呼んでいて、4人の撮影チームで噂話をするのが好きだった。特別な仕事だとも思っていたので、背が高くて良かった。
スタイリングをしていた人に「あんたは船越桂作品にそっくりね」と言われたことをずっと覚えている。
船越桂を知らなかったので調べて、自分では似てないなーと思った。しゃべらなかったら、という注釈を後からつけられたけど、静謐な美しさを持つと評価されている作品に似ていると言われるのは嬉しい。無言の時は船越桂作品を意識しようと今決めました。
定休日に「撮影の日」があったので確か写真もその時に撮っている。窮屈さを感じない素敵な場所だった。ここで働けてよかったと本当に何度も、何度も、何度も思っている。懐古厨だから忘れられないと思う。
今年の夏は奈良に行きたいな。